ご挨拶



山ア俊一部長

 皆さん、こんにちは。ようこそ、私たち慶應義塾中等部へ!
 中等部は、「慶應義塾」という、小学校から大学・大学院にまでいたる大きな一貫教育の中に位置する男女共学の中学校です。150年を超える慶應義塾の長い歴史の中では比較的新しく、戦争の傷もまだ癒えない昭和22(1947)年4月に、開校しました。創設に当たってその理念として高く掲げたのが、「自由」ということでした。「自由」こそ人間性の根本をなす高い価値であるにもかかわらず、我が国が世界中を巻き込んでむごい戦争に突入してしまった一因に、言葉の本当の意味での「自由」が日本にはいまだ根付いていなかったことがあるのではないか。戦後新たにこの国を立て直すに当たって、その真の意味での「自由」を身に付けた若人の育成こそが急務ではないか、という考えのもとに本校は創設されました。
 創設に当たって理念として高く掲げた「自立した個人を育む、自由な」教育を行うということを、現在でも教育の根幹に位置付けています。自立した個人に求められるのは「自分で考える」「自分で判断する」「自分で行動する」そして「その結果に責任を持つ」ということです。それを可能にするのが本当の意味での「自由」な教育です。この「自由」は福澤諭吉の「独立自尊」にも通じています。この理念が、本校の校風に反映されています。「ああしなさい、こうしなさい」と言われて行動すること、または「これはだめ、あれはだめ」と言われて行動することは、自由ではありません。本校には制服がありません。「べからず式」の校則もほとんどありません。式典や校外での活動では「基準服」と呼ばれるものを着用しますが、平常の通学時の服装はバッジを付けていれば、原則として自由です。こうした意味で、本校では生徒一人一人を「一人の個人」として大人扱いします。本校での生活では、常に自分で考えて自主的に行動することが求められています。
 もう一つ、草創期から大切にしている考え方は、「できるだけ明るい学校にしよう」ということです。明るい学校とは、教職員同士・生徒同士・教職員と生徒が、それぞれ自分の意見を自由に表明できるような人間関係が基本になります。本校の明るい学校とは、「人間関係が明るい学校」を意味します。明るい学校にするために、いくつかの特徴的な教育上の工夫があります。生徒は先生を「さん」付けで呼びます。これは福澤が、目上目下を問わず、誰に対しても「さん」付けで呼んでいたことの影響でもあります。また、教室に、生徒を見下ろすような教壇がありません。さらに、教員室には、試験前の数日間を除いて、生徒が自由に出入りできます。いずれも、生徒と教員の間にある垣根を極力なくして、自由にコミュニケーションがとれる環境を作ろうとする工夫と言えます。もちろん、自由だからと言って、何でも許されるわけではありません。お互いの尊重と信頼という基本的な人間関係に基づいて、それぞれの立場から自由に交流できる、そんな風通しのよい学校を目指しているのです。
 生徒が将来、円満な人格と豊かな人間性を持つことを教育目標にしていますので、教科において偏りのない知識を得て、幅広い経験を積むことが大切だと考えています。
 本校での学びは、大きく二つに分けられます。
 一つは「授業」です。大学での学問・研究に耐えうる力として「基礎学力」が欠かせない力であると考えますので、先ずは「授業」が一番大切な学びの場です。受験勉強にとらわれないというメリットを最大限に生かして、教員が各自で工夫して、生徒の興味関心をうまく引き出す授業を行っています。ときには高校レベル・大学レベルの内容にまで発展することもあります。基本的な知識・技能を習得した上で、理解する力・考える力・表現する力を養うことを大切にしています。
 もう一つの学びは、学校生活そのものを「経験」することによって身に付けていく幅広い「教養」です。これは、中等部生が、「高校生」「大学生」「社会人」になっても、生きる力になっていきます。「経験」を通した教育を行っていくために、本校では学校行事をたくさん行っています。また、クラブ活動も盛んです。「校友会活動」と呼ばれています。ハードなものからソフトなものまで、22の学芸部と17の運動部があります。このような活動を通じて、豊かな経験に基づいた幅広い「教養」を身に付けることが、「授業」と同様に、とても大切なことだと、本校は考えています。生徒ひとり一人に、この3年間で、ぜひ、自分の興味・関心に基づいた可能性や将来の夢を見つけてほしいと考えています。様々な学びを通して得た興味・関心を、高校・大学・社会において大きく膨らませていってほしいと考えています。そして、こうした学びによって、人との関係を築く力である「社会力」やグループをまとめる力・動かす力・協力する力である「実行力」が自ずと身についていくものと信じます。
 中等部の自由でのびのびとした明るい校風の中で、じっくりと時間をかけて「自分」を磨き、慶應義塾の一貫教育において、将来社会の中枢の人物になるための「総合的な人間力」を養っていただきたいと考えています。

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